医療・理化学用の遠心機の輸出営業を担当していた頃、定期的に中国へ出張し、さまざまな顧客を訪問していました。
顧客訪問というと、新規顧客へのPRや既存顧客へのヒアリングなどが思い浮かぶかもしれません。しかし、実際にその内容を振り返ると、かなり濃い経験をしてきたと感じています。
今回は、その中でも特に印象に残っているエピソードを振り返りながら、顧客訪問で具体的にどのようなことをして、そこから何を学んだのかをご紹介します。
中国語を使った海外営業に興味がある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事の3行まとめ(AI要約)
- 中国の血液センターへ、遠心機の使用履歴を管理する新機能を提案し、手作りのデモ道具を使った約10か所の訪問で2〜3か所の導入につなげた。
- 重要顧客への訪問では現地販売店との協力が受注の決め手となり、競合製品からの全面切り替えを実現した。
- 海外営業では中国語力に加え、相手の話を聞いてその場で考え行動する現場力が重要だと学んだ。
中国の顧客訪問で取り組んだ新しいシステムの提案

中国への出張で特に印象に残っているのが、血液センターに向けた新しい機能の提案です。当時、中国では設備の使用記録を電子化する動きが進んでおり、そのニーズに対応して開発された仕組みを現地で紹介することになりました。
中国で進んでいた情報化と遠心機の使用履歴の管理
当時、中国では「信息化(xìnxīhuà)」と呼ばれる情報化が進み、血液センターでも設備の稼働状況をまとめて管理しようという動きがありました。
そこで会社が開発したのが、血液バッグ用遠心機の使用履歴をデータとして記録・管理する機能です。
バーコードを読み取り、誰が、どの血液バッグを、どの装置で、どのような条件で処理したのかを記録し、施設内のサーバーでまとめて確認できる仕組みでした。
紙の記録だけに頼らず、作業履歴を把握しやすくすることが狙いです。
操作パネルを持ち歩いて営業することになった
ただ、新しい仕組みだけに、説明を聞いただけでは操作方法やメリットをイメージしにくいという課題もありました。
そこで、まずは展示会でデモ機を出展し、販売店に実際の操作を見てもらいました。
次に考えたのが、既存顧客や新規の訪問先に直接出向いて紹介する方法です。
遠心機本体を持ち運ぶわけにはいかないため、操作パネルとバーコードスキャナーだけで動作を再現できるデモ機を用意しました。
これらをキャリーバッグに詰め込んで中国へ持参し、各地の血液センターを回る営業活動が始まったのです。
デモ機を持って中国各地の血液センターを訪問した経験
デモ機を使った営業活動は約1年間続き、10か所ほどの血液センターを訪問しました。
現場の作業者や責任者にいただける時間は30分ほどと限られており、その中でシステムの特徴やメリットを伝える必要がありました。
だからこそ、少しでも理解してもらえるよう、デモの見せ方にも工夫を加えたのです。
100均の画用紙を使って工夫したデモンストレーション
実際の遠心機では、作業者の名札や血液バッグ、専用容器に付けられたバーコードを読み取りながら操作します。
しかし、持参するデモ機に用意されていたのは、バーコードが印刷された一覧表だけ。これでは実際の使用場面をイメージしにくいと感じました。
そこで思いついたのが、100円ショップで購入した赤い画用紙です。血液バッグと同じくらいの大きさに切り、バーコードを貼り付けて実物に見立てました。
さらに、クリップ付きの名札ケースも購入し、作業者用のバーコードを切り抜いて中に入れ、IDカードも再現しました。
どれも身近な材料ですが、少しでも現場の方に使い方を理解してもらえるよう、自分なりに考えて準備したものです。
多くの作業者を前にしたデモ説明と緊張感
訪問先では、システムを導入する目的や操作方法、メリットなどを中国語で説明し、その場で質問にも対応しました。
メーカーの担当者が直接説明に来たということで、多くの作業者が手を止めて集まってくださることもあり、皆さんが集中してじっと話を聞いてくださる中での実演は、かなりの緊張感がありました。
想定外の質問を受けたり、相手の話すスピードが速くて聞き取れなかったりと、冷静を装いながら心の中ではかなり焦っていたのを覚えています。
それでも、現地の販売店と一緒に約10か所の血液センターを訪問し、デモ機を使った説明を重ねた結果、最終的に2〜3か所で導入に結びつきました。
中国語力だけでなく、その場で考えて対応する現場力も鍛えられた良い経験でした。
販売店と協力して中国の重要顧客を訪問した経験

新しいシステムのPR以外にも、現地販売店からの依頼で重要顧客を訪問する機会がありました。
中でも印象に残っているのが、自社製品と競合製品の両方を使用していた、ある大規模な血液センターへの訪問です。
副センター長を前に緊張した製品説明
当時、現地の販売店は競合製品をすべて自社製品に切り替えてもらおうと、積極的に営業活動を行ってくれていました。
購入に向けた話が進んできた頃、販売店から「最後の一押しとして、メーカーからも直接訪問してほしい」と依頼があり、一緒に訪問することになりました。
訪問先では副センター長が対応してくださり、突然、遠心機の使用履歴を管理する新しい機能について、用途や操作方法、使うことのメリットなど具体的な説明を求められたのです。
遠心機自体はすでに使用しているものの、新しい機能については詳しく知らないと言われ、予想外の展開に冷や汗をかいたのを覚えています。
販売店との協力によって実現した受注
相手としては、購入を検討しているからこそ、メーカーの担当者に直接確認しておきたかったのだと思います。
ただ、副センター長を前にした説明は想像以上に緊張するもので、まるで圧迫面接を受けているような緊張感の中、しどろもどろになって何とか対応しました。
その後、販売店の尽力もあり、最終的にこの血液センターでは競合製品から自社製品への全面的な切り替えが実現しました。
日頃から顧客との関係を築いている現地販売店の存在が、海外営業ではいかに大切かを実感した経験でした。
中国の既存顧客への訪問で大切にしていたこと

新しい機能の提案や重要顧客への訪問だけでなく、すでに製品を使ってくださっている病院や大学、研究所への訪問も大切な仕事でした。
中国での顧客訪問は基本的に現地販売店との同行で、メーカーの立場から製品の使用状況を確認したり、必要に応じてアドバイスをしたりしていました。
実際の使用状況を確認しながら行ったアドバイス
既存顧客への訪問では、遠心機がどのように使われているのかを確認し、気になる点があればその場でアドバイスをしていました。
例えば、遠心機内部のチャンバーが汚れている場合には、試料の固着やトラブルを防ぐため、定期的な清掃をお願いしていました。
ほかにも、バケットの摺動部へのグリス塗布や、採血管の破損を防ぐための底ゴムの使用など、確認するポイントはいくつもあります。
専門的な修理まではできませんが、営業として気づけることもあります。実際に自分の目で使用状況を確認し、できる限りアドバイスすることを心がけていました。
顧客から直接聞いた声と現場での交流
訪問先で不具合の相談を受けた際には、販売店と一緒に状況を確認し、必要に応じて日本にいる技術者にその場で電話をしていました。
できる限りその場で問題を解決できるように動くことも、メーカー担当者としての大切な役割です。
また、実際に遠心機を使っている方から、競合製品との使いやすさの違いなど、現場の生の声を聞けるのも顧客訪問ならではの経験でした。
一方、訪問時に会社のロゴ入りの3色ボールペンや付箋をお渡しすると、作業者の方々が喜んで使ってくださったのも印象に残っています。
こうした何気ない交流も、顧客との関係づくりにつながっていたように思います。
中国の顧客訪問のよくある質問
中国の顧客訪問ではどのようなことをしますか?
新しい製品や機能のデモ・提案、販売店と同行しての重要顧客への説明、既存顧客での使用状況の確認やアドバイスなどを行います。不具合の相談にも、できる限りその場で対応します。
中国の顧客訪問は現地販売店と一緒に行くのですか?
筆者の場合、基本的に現地販売店と同行して訪問していました。日頃から顧客と関係を築いている販売店との協力が、受注にも大きく影響します。
中国語を使う海外営業で大切なことは何ですか?
中国語力はもちろん大切ですが、相手の話を聞き、自分に何ができるかを考えて行動する姿勢が重要です。想定外の質問にもその場で対応する現場力が求められます。
まとめ|中国の顧客訪問を通じて学んだこと
中国での顧客訪問を振り返ると、製品の説明や提案だけでなく、現場でしか得られない経験がたくさんあったと感じています。
中国語での説明に苦労することもありましたが、その場で考えて対応する現場力や、現地販売店と協力して顧客の課題に向き合うことの大切さを学びました。
海外営業では中国語力ももちろん大切ですが、それ以上に相手の話を聞き、自分に何ができるのかを考えて行動する姿勢が重要だと思います。
これから中国語を使って仕事をしたいと考えている方にとって、今回の経験が少しでも参考になれば嬉しいです。


