中国の人々は、レストランで食事をしながら家族の絆や友人との親交を深めるのが好きです。ビジネスパートナーなどとの信頼関係を深めたい時にも、よくレストランで食事を共にします。
一緒に食事しながら腹を割った話をし、互いをより深く理解して関係を強める……今回はそんな役割をも担っている中国の外食文化についてご紹介します。
この記事の3行まとめ(AI要約)
- 中国の外食は単なる食事ではなく、賑やかに会話しながら家族・友人・ビジネス相手との信頼を深める社交の場で、高級店ほど静かなのは防音設備のためであり、会話をしないからではない。
- 外食の歴史は長く、宋代(960〜1279年)に庶民の日常へ本格的に定着し、椅子とテーブルに大皿を並べて取り分けるスタイルが生まれた。明代創業の「便宜坊」など今も続く老舗もある。
- 日本との違いは食器の扱い・支払い・席順・持ち帰り・食べ残し・乾杯など8つあり、特に席順と乾杯は相手の面子に関わるため注意が必要となる。
中国の外食文化の特徴とは?

旅行や出張などで中国に滞在する人の多くが楽しみにするのが食事です。中国料理はとても種類が豊富なので、どこで何を食べればいいか迷う人は多いでしょう。特に北京や上海を筆頭とする大都市には、文字通り中国各地のさまざまな美食を提供する店が集中しています。
中国で比較的庶民的なレストランに入ると、がやがやしていてとても賑やかなことに気づきます。中国では賑やかに会話をしながら食事をすることで、親交や信頼関係を深める人が多いからです。一般的に、高級なレストランに入るほど店内は静かになりますが、それは防音のための設備や個室が完備しているからで、人々が会話をしないからではありません。一緒に賑やかに食卓を囲むことは、中国の人々と親交を深めるための第一歩といえます。
中国の外食文化の歴史

じつは中国はとても長い外食の歴史をもつ国です。宋の時代(960~1279年)には、大型の飲食店や今の居酒屋に近い店舗が営業を始め、外食が大衆の日常生活の中に本格的に定着していたと言われています。都市への人口集中、貨幣経済の発達なども追い風となり、商人やさまざまな労働者を含む人々が自宅ではなく、屋台や料理店で食事をとるようになりました。店の方でも、それまでなかったさまざまな料理を提供するようになり、今の外食産業の原型が形成されました。
それ以前の時代でも、宮廷での宴会や貴族向けの専門の料理人は存在していました。また旅人や富裕層などが利用する飲食店もありました。しかし消費社会が高度に発達し、庶民が代金を支払って店舗で食事をする習慣が本格的に普及したのは宋代からとされています。とくに北宋の首都である開封や南宋の首都である臨安では、飲食店や茶館や屋台が非常に発達しました。
店舗側の営業形態も多様化し、宴会向けのレストランや麺類だけを売る店、点心や菓子の店などが登場しました。宋代には、飲食のスタイルにも変化が生まれました。それまで「床に座り、個別の膳で食べていた」のが、「椅子に座り、テーブルに大皿料理を並べ、取り分けながら食べる」ようになったのです。
中国の外食産業はその後も発展を続け、やがて明朝や清朝になると、「便宜坊」「都一処」「東来順」などの、現在も老舗として名を馳せているレストランが出現します。とくに北京ダックで有名な「便宜坊」は創業が明の永楽14年(1416年)に遡り、中国最古のレストランと呼ばれています。
中国人の外食の頻度は日本より高め
日本と比べ、中国に住む人々の外食の頻度は高めです。朝食から外食という人が人口の2割近くを占め、とくに香港は日常的に外食する人の割合が高いことで知られています。家族がいる場合、夕食は自宅でとる人が多いですが、外食の費用が全般的に日本より安いため、日本より気楽に外食を選ぶ傾向があります。
もっとも独りで外食する場合、レストランだと少し不便な時があります。中国のレストランは数人での会食を前提としている事が多く、一皿の量が多めだからです。特に中国北方のレストランではその傾向が強くなります。そのため一人で外食をする場合は、麺類や定食などの一人用の食事を提供する飲食店を利用するのが一般的です。
中国と日本の外食文化の違い

中国と日本の外食文化には似ている面もありますが、以下のような違いもあります。
①食器の使い方
中国の食卓では食器は基本的にテーブルに置いたまま食事をし、お碗であっても手に取って食べることはありません。また箸は横向きではなく、縦向きに置くのが原則です。
②代金の支払いについて
数人で食事をした時、日本では割り勘で支払うことも頻繁に行われています。でも中国ではまだ一般的ではありません。中国にも割り勘を指す“AA制(zhì)”という言葉はありますが、まだまだ参加者の一人が全員分をおごるというスタイルが一般的です。
③席順について
中国の人が円卓で会食をする時、「どの席に誰を座らせるか」は非常に重要です。通常は入り口から一番奥の席を上席とし、主賓を座らせます。そしてその席の向かって右、左の順に重要な人物が座っていきます。入り口に一番近いのが下座で、普通は年齢の若い人や世話係が座ります。ちなみに食事の際、ターンテーブルは時計回りに回すのが原則です。
④料理の持ち帰りについて
客が注文した料理が余っても、日本では「持ち帰り不可」の場合がほとんどです。客が鮮度が落ちた料理を食べることをレストラン側は恐れるからです。しかし中国では注文した料理が余った時、“打(dǎ)包(bāo)”(テイクアウト)したいと頼めば持ち帰らせてくれます。たいていの場合は、手をつける前の料理をそのまま持ち帰ることも可能です。
⑤大皿に盛る文化
中国のレストランでは、大皿に盛られた料理を、各自が好きなだけ小皿に取り分けて食べるスタイルが中心です。遠慮する客に対し、もてなす側はしばしば率先して客に食事を取り分けます。
⑥食べ残しの文化
食事を振舞われた時、客は完食せず、料理を少し皿に残しておくのがマナーとされています。「食べきれないほどもてなしてくれた」という感謝の気持ちを表すためです。すべて食べてしまうと、「まだ食べ足りない」という意思表示になってしまいます。
ただし、皿に大量に料理を残す風習については、近年、食品の浪費を禁じる法令が可決されたため、控えられる傾向にあります。
⑦食材の鮮度を強調
レストランでの注文のスタイルには、店や地方ごとに若干の差があります。地方によっては、店先に並んだ食材の中から調理してもらいたいものを選び、調理法を指定して料理してもらうというのが基本スタイルのことがあります。店頭にある水槽から魚を選び、それを調理してもらうスタイルの店もあります。店によっては調理を始める前に魚を網などに入れ、「この魚でいいか?」と確認しにきます。これは調理するのが新鮮な魚であることを伝えるお店のサービスの一つです。
⑧乾杯文化
会食でお酒を口にする時、中国では同席の人を誘い、“敬(jìng)您(nín)一(yì)杯(bēi)”(あなたに乾杯)などと言いながら一緒に飲むのが普通です。また敬意を表すため、酒杯を手に参加者一人一人と乾杯をして回る文化があります。中国語で乾杯は“干(gān)杯(bēi)”で、文字通りグラスを空にすることです。宴会では白酒などの度数の高い酒が振舞われることが多く、またひとたび酒が飲めると思われると何度も乾杯に誘われるので、酒に弱い人は注意が必要です。
飲めない場合、最初にはっきりとその旨を伝えれば、無理に勧めてくることは稀です。また、たとえ誘われても“随(suí)意(yì)随(suí)意(yì)”と言いながら一口だけで済ませたり、“以(yǐ)茶(chá)代(dài)酒(jiǔ)”(酒の代わりにお茶で)と言いながらお茶で乾杯することもできます。
まとめ
中国の外食は、賑やかに食卓を囲みながら人と人との距離を縮める、その国らしさが詰まった文化です。長い歴史のなかで培われた習慣やマナーには、日本と違う点もたくさんあります。
上に挙げた差のうち、席順や乾杯の文化については、無視すると相手のメンツを傷つけてしまうことがあるので、少し注意が必要です。最初は文化の差に戸惑うかもしれませんが、基本を押さえたら、あとは慣れるだけ。あまり堅苦しく考えず、会話と料理を楽しみながら、少しずつ経験を積んでいきましょう。


