日本で「食べ歩き」といえば、お祭りや縁日の時くらいかもしれません。でも屋台文化が発達した中国では、食べ歩きはもっと身近な習慣です。外で食べられる食べ物の種類も豊富なので、好奇心さえあれば、いろいろなグルメを飽きることなく楽しめます。青空の下での食べ歩きには、レストランでの食事とは違った爽快感があり、味も格別に感じられるものです。今回はそんな中国の食べ歩き文化についてご紹介します。
この記事の3行まとめ(AI要約)
- 中国では夜市や屋台(路边摊)が身近で、食べ歩きは日常的な習慣、通常の飲食店でも打包(テイクアウト)を頼めば外で食べられるため、広場や公園でも気軽にグルメを楽しめる。
- 食べ歩きに寛容な国だが、人混みでの汁もの・串の扱い・ゴミの分別・QRコード決済の準備には要注意で、常識の範囲でTPOを守ることが大切。
- 串刺し系・挟む包む系・麺類など多彩な小吃があり、広東省や四川省など地域差も大きい、食べ歩き文化が育まれた背景を知れば食文化の理解が深まり、店の人との会話の実践にもつながる。
中国で食べ歩きができる場所は?

中国で食べ歩きをする場合の人気スポットは、都市の一角に立つ “夜(yè)市(shì)”です。“夜市”では夕方から夜にかけて軽食やおやつを売る屋台”路(lù)边(biān)摊(tān)”がずらりと並びます。朝や昼間でも、住民の需要が多い旧市街や歩行者天国がある繁華街などでは、”路边摊”を見かけることがあります。また中国では通常の飲食店でも、“打(dǎ)包(bāo)”(テイクアウト)したいと頼めば、外に持ち出して食べられることが多いです。そのため天気がいい日などは、好きな料理をテイクアウトして付近の広場や公園などで食べることもできます。
中国で食べ歩きをする時のマナー
中国は食べ歩きにとても寛容な国。よほど非常識なことをしない限り、マナー違反とは見なされません。それでも食べ歩きをする際、ぜひ気をつけたいことがいくつかあります。
- 人込みではできるだけ歩きながら食べるのを避け、食べ物のソースや汁、飲み物などが周囲の人に付着したり降りかかったりしないよう、十分注意しましょう。
- 串や箸などの先の尖ったものを持ち歩く時、自分や周りの人をうっかり刺さないよう、十分気をつけましょう。とくに串を持ち歩いている時に誤って転ぶとたいへん危ないので、串の扱いと足元には十分注意しましょう。
- ごみはポイ捨てせず、ゴミ箱を探して捨てるようにしましょう。ごみを分別できるごみ箱なら、しっかり分別して捨てましょう。
- 屋台を含む現在の飲食店では、スマホでQRコードを読み取るスマホ決済が普及した結果、現金支払が不可だったり、現金可でもおつりが十分に用意できない店が増えています。そのため可能であれば事前にAlipay(支付宝)やWeChat Pay(微信支付)などによるQRコード決済を使えるようにしておきましょう。衛生的にも、食事の前後に現金を手で触らずに済む方が安心です。
食べ歩きの文化が普及している中国ですが、もちろんどこででも食べていいというわけではありません。TPOには注意し、常識の範囲内で食べ歩きしましょう。
中国で「食べ歩きの文化」が残る地域は?

中国の食べ歩きの文化には地域差があり、特に盛んなのは南方の各省、とくに食文化の豊かな事で知られる広東省や四川省、江蘇省などです。中でも武漢の人は朝の出勤時に食べ歩きをする人が多いといわれています。地元に根付いた一種の風習ですが、生活のリズムが速く、朝食を出す店の面積も狭いため、食べ歩きを余儀なくされているという分析もあります。そこには、食べ歩きをしてでも朝食は抜かないという、中国の食文化も影響しています。一般に中国には食事の時間や風習をしっかり守る人が多いからです。
また中国では近年、中国のご当地グルメを探して各地を「食べ歩く」ことが流行っています。地元の隠れ家的レストランを探し歩いては味わい、ネット上でその店の評価やコメントをするのです。これは新しい形の「食べ歩き」文化で、彼らの多くは屋外で食事をするわけではなく、店内で普通に食事をします。美食体験だけのためにかなり遠方の都市にあるレストランを訪れる食通も増えており、最近の観光客が旅先でのグルメ体験を重視し始めていることを表しています。
中国各地の食通たちによる評価は、グルメサイトなどに反映され、ランク付けされます。ランクインするレストランが比較的集中している都市には、上海、北京、成都、重慶、広州などが挙げられます。
「食べ歩き文化」を代表する中国料理は?

食べ歩きしやすいのは、中国で“小(xiǎo)吃(chī)”と総称される軽食やおやつです。中国各地にそれぞれ名物の“小吃”がありますが、代表的なものは以下の通りです。
串刺し系
“烤(kǎo)肉(ròu)串(chuàn)” 代表的なのは“羊肉串”、つまり羊肉のシャシリクです。いわば屋台グルメの常連として揺るぎない人気を誇っており、店によってはさまざまな部位の羊肉を注文できます。この他、鶏の手羽先や地元で獲れる魚介類、さらにはサソリや蚕などの珍味を串刺しにしたものも人気があります。
“冰(bīng)糖(táng)葫(hú)芦(lu)” 中国北方の冬の風物詩で、その起源は南宋時代まで遡ります。サンザシの実を飴がけにしたものが代表的ですが、この他にもイチゴ、ヤマイモ、ミカン、ブドウなどを串刺しにしたものが人気です。
“麻(má)辣(là)烫(tàng)” 四川発祥の山椒の辛みが効いた煮込み料理です。さまざまな具を串に刺したまま煮るのが特徴です。レンコン、タケノコ、豆腐、肉団子、ソーセージ、キノコ類など、さまざまなものが具になります。この他、串に刺して調理する四川料理には“串(chuàn)串(chuàn)香(xiāng)”や“钵(bō)钵(bō)鸡(jī)”などがあります。
挟む・包む系
“肉(ròu)夹(jiá)馍(mó)” 中華バーガー、中国式ハンバーガーなどと呼ばれることもある、陝西省発の人気料理です。スパイスとともに煮込んだ羊肉や豚肉が、コリアンダーなどとともに中国風のパンに挟んであります。主食とおかずを片手で同時に食べられるので、食べ歩きにはもってこいです。
“煎(jiān)饼(bǐng)” 文字は同じでも、日本の煎餅(せんべい)とはまったく違う食べ物です。また中国国内でもさまざまな食べ物が“煎饼” と呼ばれていますが、代表的なものはクレープ状に焼いた生地にさまざまな調味料や具を挟んだものです。生地には小麦、コーリャン、トウモロコシ、紫米、ヤマイモなどさまざまなものが使われることがあります。注文すると目の前で作ってくれるので、調理の過程を眺めるのも楽しい料理です。
麺類
“炒(chǎo)面(miàn)” いわゆる焼きそばですが、中国では少し太めの麺を炒めることが多いです。卵やチンゲン菜、ニンジン、ネギなどと炒めるのが定番です。
“炒(chǎo)粉(fěn)” ビーフンを炒めたもので、太さや一緒に炒める具は様々ですが、いずれもつるっとした食感が特徴です。
“酸(suān)辣(là)粉(fěn)” 太めの春雨をスパイス入りのスープで味付けたもので、その名の通り、強い辛さと酸味が特徴です。
これらは多種多様な中国の屋台グルメのほんの一部に過ぎません。この他、焼いた芋やトウモロコシなども人気があります。
同じ名の料理でも地方や店によって作り方や材料に違いがあったりするので、旅に出たらぜひその差を比べてみましょう。
日本と中国で異なる食べ歩き文化
中国で食べ歩きの文化が広まった理由はいくつかあります。まずかつての中国では、都市に人口が集中した結果、自宅に専用の台所がない家庭が少なくありませんでした。また共働き家庭が多く、家族が家の外で食事を済ませねばならない機会も多めでした。それに加え、食堂のスペース不足、都市での生活は時間に追われやすいなどの理由で「食べ歩き」が容認される文化が育ったと考えられます。同時に、中国には古くから行商の文化があり、食べ歩きに便利な“小吃” と呼ばれる軽食やおやつの文化も絶えず発達してきました。
最初は屋外で食べ歩くことに抵抗がある人もいるかもしれません。しかしこのように、食べ歩きの文化にもそれが育まれた背景があります。歴史や文化が違えば常識も違うのは当たり前。もし露店に並ぶ食べ物に心惹かれたなら、ぜひ思い切って試してみましょう。食文化の理解に役立つだけでなく、お店の人とあれこれ話すことで、会話の実践にもなります。


