中国の著しい経済成長に伴って、中国語を話す人材の需要が年々高まっています。しかし、ただ中国語を話せれば良いというわけではありません。中国人との職場では、言語能力に加えて、中国の文化的な理解と適応力が求められます。この記事では、中国語を活かして働くにあたり、求人市場で優位に立つポイントについて、実践的な観点から解説します。
中国の職場における特徴

日系企業の中国現地法人で活躍する
日系企業の中国支社で働く日本人は多くいます。特に、日本語・中国語・英語のトリリンガル人材に対する需要が高まっています。製造業では、品質管理や生産技術部門で、日本の本社と中国工場を繋ぐ「架け橋」役として活躍する機会が多くあるほか、IT業界でも、日本と中国をつなぐブリッジSEが活躍しています。日中双方の言葉と文化を理解する人材は、重宝されているのです。
職場でのコミュニケーション
中国の職場では、直接的な表現よりも関係を重視した丁寧な表現が好まれる傾向があります。上下関係もしっかりしていますし、報告・連絡・相談は、中国語で「汇报(huìbào)・沟通(gōutōng)・商量(shāngliang)」と表現され、日本以上に頻繁なコミュニケーションが求められます。会議では、全員が意見を述べる機会が与えられることが多く、積極的な発言が期待されます。また、意思決定においては、日本の「根回し」と似たような考え方もあるものの、中国ではよりトップダウン的な決定がなされる傾向が強いです。
デジタルツールを用いたコミュニケーション
WeChat(微信)をはじめとする中国独自の業務ツールの活用は必須です。企業版のWeChatも普及しており、業務連絡もツールを用いてなされる場合が多いです。ビジネスパートナーとWeChatでつながることは、正式な関係構築の一環として捉えられています。一方で、日本のように「仕事用メール、プライベート用SNS」といった区分けが明確ではなく、仕事と私生活の境界線が日本より曖昧になる場合もあるので、適切な距離感を持った対応が求められます。
教室の中国語と職場の中国語
よく聞かれるのが、大学や語学学校で習得した中国語と、実際のビジネス現場で求められる中国語は大きく違うということです。日常会話とは異なり、ビジネスの場では専門用語が求められます。。例えば製造業なら「品控」(pǐnkòng)、「供应链」(gōngyìngliàn)といった用語が日常的に飛び交いますし、IT業界なら「数字化转型」(shùzìhuà zhuǎnxíng)、「用户体验」(yònghù tǐyàn)などの最新用語を把握しておく必要があります。
中国語におけるビジネスの特徴

地域性を理解する
中国でのビジネスでは、市場の特性を理解した上での戦略的アプローチが重要です。中国市場は地域によって消費者の嗜好やビジネス習慣、産業が大きく異なり、一概に「中国市場」と捉えることはできません。華北・華東・華南・西部でそれぞれ異なる市場特性を理解し、地域に合わせた対応が必要です。
関係性を重んじる
交渉の場面では、「关系」(guānxi)の構築が日本以上に重視されます。取引開始前に数回の食事会を重ね、信頼関係を築いてから本題に入ることが一般的です。また、面子(miànzi)を傷つけない配慮が重要で、公の場での批判や否定は避けるべきです。さらに、中国の交渉の場では直接的な拒否は避けられ、「考虑一下」(kǎolǜ yíxià)などの婉曲表現が多用されるので、その背後にある真意を読み取る能力が求められます。
ビジネスメールの書き方
ビジネス文書の形式も日本とは異なります。中国のビジネスメールには日本の「拝啓」「敬具」に相当する定型文がなく、より直接的な書き出しが一般的ですが、役職名の正確な使用や、適切な敬称の選択には細心の注意が必要で、これらを誤るとビジネス関係そのものに影響を与えかねません。
契約における慣習
これは中国に限った話ではありませんが、契約書に関しては、詳細な条項を明確にすることが肝要です。中国において、口頭での合意は尊重されますが、書面での契約を徹底し、解釈の違いが生じないように注意が必要です。近年では、デジタル契約の普及も進んでいます。
中国語を活かした求人

中国語を活かしたのキャリアパスは、近年大きく広がっています。従来からある通訳や翻訳職に加えて、中国語を専門性の一部として組み込んだ多様な職種も登場しています。
求人情報は、日系企業の採用サイト、中国関連の専門求人サイト、人材紹介会社などで探すことができます。業界や職種によって求められるスキルセットが異なりますので、中国語を専門職として位置づけるのではなく、既存の専門性と組み合わせることが必要です。
貿易・商社
輸出入がメインの貿易や商社では、輸出入業務、購買担当、営業職などにおいて、多くの中国語スピーカーが働いています。日本と中国の双方の立場を理解しながら働くことの出来る人が重宝され、中国企業との取引経験や貿易実務の知識があるとさらに優遇されます。
製造業
日本企業の工場が多く進出している中国では、製造現場における生産管理、品質管理、技術サポートなどの求人が多いです。工場での実務経験や技術知識の需要高く、日本本社と中国現地法人の間を結ぶプロジェクトマネージャーや、技術移転を担当するエンジニアは重宝されます。ある機器メーカーでは、中国語ができる技術者が現地工場の立ち上げを担当し、生産効率の大幅な改善に貢献した例などもあります。
IT・テクノロジー
日系企業における中国市場向けサービス開発、現地企業との協業プロジェクト、ブリッジSEなどの求人が多いです。システム関連の知識はもちろん、技術力に加え、中国のIT環境への理解が求められます。また、越境ECのコンサルティング、中国向けコンテンツ制作など、ニッチな分野で活躍するケースが増えていて、言語能力だけでなく、日中のビジネス慣行や法制度に関する知識も必要です。
観光・サービス
訪日中国人が増えている中、旅行代理店やツアー会社におけるインバウンド対応、中国市場向けマーケティングなどの求人が多数あります。観光業における経験はもちろんですが、消費者向けの業界なので、接客経験やホスピタリティの知識があると有利です。
中国語翻訳
中国語翻訳の仕事は、単なる言語の変換ではなく、日中の文化的背景の理解と適切な表現の選択が求められる専門職です。実務翻訳においては、契約書、仕様書、マニュアル、業務文書などの翻訳です。日本語から中国語、中国語から日本語のどちらも行います。内容の正確性が最優先され、業界の専門用語の正確な知識が必要です。技術翻訳では、特許文書、技術資料、研究論文などを翻訳します。専門分野の深い知識と最新用語の把握が不可欠です。商業翻訳においては、マーケティング資料、広告文案、企業PRなど。ターゲット層に合わせた創造的な表現力が求められます。
まとめ
中国語を取り巻く環境は今後も変化し続けるでしょう。AI技術などの進歩によって、一部の単純な通訳や翻訳作業は無くなっていく可能性もあります。しかし、複雑な交渉や微妙なニュアンスの伝達、文化的な配慮を必要とするコミュニケーションにおいて、人間の言語能力と文化的理解が求められる場面はむしろ増えていくでしょう。
中国語学習者は、発音や文法の細かい正確さなど、完璧な中国語を目指すよりも、専門分野において必要な情報を収集し、意思を伝達し、関係を構築するための実用的なツールとして中国語を位置づけることが重要です。文化的背景を理解せずに、言語だけを正確に使っても、効果的なビジネスコミュニケーションは成立しません。言語学習と並行して、中国の社会構造、ビジネス慣行、歴史的背景についても学んで、日中の架け橋として、活躍することを目指しましょう。

